
むかしむかしのことです。
天の神様が動物たちに向かって、おふれを出しました。
「一月一日には全員集合しなさい。早いものの順に、その年を仕切る栄誉を与えよう」とおっしゃいました。動物たちは全員「がんばるぞ」とばかりに、気持ちを高めました。
まず牛【丑:うし】です。「私は足がのろいので一日早く出発しよう」と一日早く出発しました。それを見ていた鼠【子:ね】。ちょっと失敬とばかりに牛さんの頭の上へひょいと飛び乗りました。「らくちんらくちん」と神様の屋敷へ向かいました。
神様の門の前まで来ると、鼠は、ひょいと飛び下りて、第一位にゴールイン。つづいて牛が第二位。
つづいて「千里の道も一日で走る」という虎【寅:とら】、猛スピードで第三位のゴールイン。
次は「脱兎の如く」と言われる兎【卯:う】が素早い走りで第四位のゴールイン。
次は空飛ぶ竜【辰:たつ】です。空の上から地上を見ると、蛇【巳:み】がにょろにょろと走っています。竜は気の毒に思い「私の背中に乗りなさい」と乗せてやりました。そのため少し遅れて、竜は五位にゴールイン。蛇は六位。
次にやって来たのは、颯爽とたてがみをなびかせた馬【午:うま】、第七位のゴールイン。次は羊【未:ひつじ】。よく頑張って八位のゴールイン。
次は猿【申:さる】と犬【戌:いぬ】は、「犬猿の仲」なので喧嘩ばかりしていて、一向に前へ進みません。鳥【酉:とり】が、その真ん中に入って「まあまあ、走って、走って」とせかせながらやって来ました。九位が猿、十位が鳥、十一位が犬です。
最後は、猪【亥:い】さんがよたよたとやって来ました。昔、中国では猪は豚のこと。豚は、やっと十二位にもぐり込みました。
「十二位でおしまい。おやおや猫がいません。あれあれ」。猫は、出発するときに、鼠に聞きました。「神様の家へ行くのはいつだっけ?」鼠さんは「一月二日だよ」と嘘を教えました。だまされた猫はカンカン。今になっても猫は、鼠を追いかけているのだそうです。
おっと、もうひとつ忘れていたことがあります。残念にも、十三位で門をくぐったのは、いたちさんでした。神様は、気の毒に思い「年の干支には入れないが、月の一番初めを『つ・いたち』としよう」と言って、一ヶ月の一番初めを、ついたちとしました。