あおぞら歳時記 : 秋の雨
掲載日時: 2019-10-28 6:00:00 (203 ヒット)
秋の雨は、粛々と降り続き寂寥感に苛まれます。
秋霖(しゅうりん)とは、初秋の長く降り続く雨のことです。
「秋霖が秋の気配を運んでくる」というように、秋の気配は少しずつ深まっていくのです。
「憂愁の思い深める秋の雨」と詠われるように、秋思(しゅうし)への思いがしきりです。
秋の深まりと同時に氷雨が降り始めます。手もかじかみ背を丸めて歩きます。
年齢を重ねたせいか、高浜虚子の句、「傘さして行くや枯れ野の雨の音」。何とも言いようのない風景が目に浮かびます。無彩色の枯れ野に冷たい雨が降りしきり、その雨音だけが傘の上に響きます。
「月日は百代の過客にして、行き交う人はみな旅人なり」と、芭蕉は「奥の細道」の冒頭で述べています。行き交う人も旅人ですが、様々な出来事も走馬灯の如くに浮かんでは消えます。
「行く末はた誰が肌ふれむ紅の花」。濃い黄赤色の紅花をみて「どんな女性の口紅となるのだろうか」。芭蕉のこんな句を聞くと、ふと心が温められます。